Booklog - サンダー・キャッツの発酵の旅 世界中を旅して見つけたレシピ、技術、そして伝統

氏の旅や知人を通じて得た世界各地の発酵の技法と食品、その一部のレシピを紹介する本。 素材や技法は似ていても地域差があってそこに多様な文化があるという。レシピは完全なではなくて 氏が自身をジェネラリストであることが発酵実践者としての強みであると認識してるのは成る程な。 広範な知識と経験があるとそれらが関連付いて深化していくのは何事も同じか。

2025-05-20, read count: 1, page: i ~ xiii

1 章 糖 糖の発酵でアルコールや酢を得るのは世界中のどこでも見られる。 パームワイン、プルケ、メスカルの節を読んだ。 パームワインはアフリカやアジアで作られる酒で、ヤシの樹液を発酵させたもの。地域の呼び名があってビルマではトディー(toddy)という(調べたところシュロの樹液から作るようだ)。 トディーは発酵が早いためを蒸留してアラック(arak)にすることで保存できるようにするが、中等のアラックとは別物。 プルケ(Pulque)とメスカル(Mezcal)はともにマゲイ(Agave americana 、 リュウゼツラン、アガベ)を原料にしたメキシコの酒。 マゲイから採取されたアグアミエルを発酵させてプルケを作る。メスカルはマゲイの株自体を焼いたあとパルプにし発酵&蒸留して作る。テキーラはメスカルの一種で、 1 種類のマゲイからできていて製法も決まっている。 マゲイはプルケやメスカルを作り消費する以外にも生活や土壌の保護と結びついていて、文化的な重要性も持っている。 メスカルと言うとペヨーテを思い浮かべたが綴りが違った。

2025-05-21, read count: 1, page: 0 ~ 14

ウンブリア州のワイン作り、地方の慣習が商業規格で流通しなくなるというのは、日本でも道の駅で買えなくなった漬物の話と同じか。 メキシコのテパチェ(Tepache)と中南米のグアラポ・デ・ピーニャ(Guarapo de pina)ははパイナップルから作る。 カリブ海のモービー(mauby)は木の樹皮・根幹・スパイスと砂糖で作る。柿酢はその果肉を漬け床にすることができる。 フルーツ酵素過激派は酵素が全てを解決すると思ってるが氏はそう簡単ではないというスタンスで良かった。 蜂蜜から作られるミードには植物性の風味が漬けられることが多い、ターメリックのミードもそのバリエーション。 糖の発酵はバックスロッピングするものもあるが、どれも原材料が自然と発酵を始め、絶えず発酵が続きアルコールから酢に変わる。 そういう点でもプリミティブなんやろな。

2025-05-22, read count: 1, page: 15 ~ 31

2 章 野菜 野菜の発酵はプロセスがわかりやすく本質的に安全で比較的優れた効果を得られるため最初に手掛けるのに向いている。 この章では塩漬け発酵の起源と考えられる中国をはじめ世界各地の手法を紹介し、塩を使わない日本のすんき漬けや発酵野菜を乾かす実験的アプローチを紹介している。 氏が発酵を始めた現実的な理由は菜園の収穫。前に読んだピクルスと漬物の歴史でも中国が塩漬けの起源で紀元前 11 ~ 7 世紀には既に見られたとあったな。 成都なので四川と雲南省のパオツァイ。成都の作り手のこだわりは麦芽糖に叮叮糖を使うこと。 Wikipedia を見るに香港の駄菓子みたい。雲南省の作りては野菜を日干しし糖類を添加しない。 貴州の重湯漬けは炒ったもち米の煮汁につける。 産膜酵母が張ってても気にせず混ぜ込むシェフ、まあそうするよなというのはわかるが産膜酵母が張ったあとの味はあまり好きじゃない。 People's Republic of Fermentation は暇なときに見よう。

2025-05-23, read count: 1, page: 32 ~ 46

日本は長野木曽のすんき。すんきは塩を使わず前年の漬け汁でバックスロッピングする。以前長野に行ったときには売ってなかったのもあり、季節のもので手に入れにくい印象がある。 教え子のターメリックペースト漬け。ペースト自体が発酵しててそれも漬けた野菜と一緒に食べれる。他の野菜でもできるのかな。 クロアチアのザワークラウト。キャベツを丸ごと発酵させる。芯をくり抜き塩を詰める。 スパイスとして胡椒を添加したり、発酵を促進させるため乾燥トウモロコシを入れる。 現代は密閉しやすいように食品グレードのポリ袋を利用する。 原初は水を加えずキャベツの水分だけで漬けてたので、これも現代的な変化か。

2025-05-24, read count: 1, page: 47 ~ 60

ルーマニアの丸ごとザワークラウトは水を使わない。ザワークラウトで具を包むサルマと塩漬けのブドウの葉で包むドルマ。 本書ではトルコにも触れられてるが、確かセルビアにもサルマがあって、どうも中東から東ヨーロッパにかけて親しまれてる伝統料理みたい。 スイス山中のクラウト工場の製法の現代化の流れは興味深い。ザワークラウトのチョコレートケーキはスポンジのための重曹で酸味が中和される。 メキシコ風キムチと昆虫食。アミの塩辛の代わりにチャプリネス(Chapulines バッタの唐揚げ)を使う。アミの塩辛みたいに発酵してないけど。 ポーランド風キムチ。きのこの発酵は興味が強いがまだやったことない。加熱は必須やろな。

2025-05-25, read count: 1, page: 61 ~ 75

Cultured Pickle Shop の粕漬けは Takara Sake の酒粕で長時間漬ける。調べてみたらどうも宝酒造みたい。 Feb Ferments の Bubonic Tonic ビーツクワスはビーツを使った発酵飲料。ピックルバックみたいな感じ? ビルマのラペソーは若い茶葉を発酵させる。手に入れにくいので乾燥茶葉を使うアレンジ。 スペインの発酵オリーブ。アク抜きに 5~20 日間と時間がかかる。オリーブ好きなのでやってみたがい手に入れにくいので却下。 スペインのオリーブ農場でかつて使われていた石・機械式の圧搾機、趣があって良い。 発酵野菜や漬け汁を乾燥させる。ネパールにグンドゥルックという発酵野菜があるみたいなので、更に保存性を高める手段で使われるのかな。 漬け汁を乾燥させて塩を得るのは、梅酢で作る梅塩みたいな感じか。

2025-05-26, read count: 1, page: 76 ~ 95

3 章 穀物とイモ類 世界の大部分で穀物とイモ類は主食であり、発酵はそれらの食品の栄養素を利用しやすくし強化する。 欧米では穀物の発酵はパンとビールが主だが、世界中で様々な形の発酵が行われている。 現在の穀物の製粉の殆どは巨大な工場で行われ、利便性や効率と引き換えに食料安全やサプライチェーンにおける危機がある。 氏は地元や近隣地域での食品加工の復活がその解決策であると考えている。 キシェルはオーツ麦を水に浸し発酵させポリッジにした食品。かつての東ヨーロッパでは一般的だったが、現在はあまり見られない。 ビールなど活発に発酵した飲料をスターターにしてパンが作れる。 塩入り自然発酵パンは Clostridium perfringens(ウェルシュ菌) でパンを膨らませる。ギリシャやスーダンで同様の手法が見られる。 ウェルシュ菌で調べると食中毒の話ばかりですごく珍しい手法のよう。

2025-05-27, read count: 1, page: 96 ~ 106

中国のコメから作る酒。パイチュウ(白酒)とヌオミーチュウ(糯米酒)。白酒を蒸留するための、中華鍋の上において使うシンプルな蒸留器がある。 恐らく糯米酒の話。酒麹という市販のスターターを使うコメのアルコール発酵。搾りかすはチュウニャン(酒醸)といい、デザートなどに使われる。 極めてシンプルな発酵手法やな。どぶろくのようで糯米だし濾すので薄濁りみたいな感じ?

2025-05-28, read count: 1, page: 107 ~ 115

チチャ(chicha)は南米の主にトウモロコシ、他の穀物、芋類、フルーツ、蜂蜜や糖類から作られる、主にハレの日に用いる発酵アルコール飲料。 チチャは本来 fabkua と呼ばれていたが、スペイン人が fabkua で腹を下したのをチチャ(下痢)と現地の人が言ってスペイン人たちが名前だと勘違いしたのが始まりだという。 発酵によって酢に変化するため調理の応用範囲が広い。伝統的に作り手は女性で、古い手法ではいわゆる口噛み酒の手法で、他にはモルトを使う手法がある。 チチャ・デ・ホラ(chicha de jora)はエクアドルの手法のチチャ。ホラはモルト処理したトウモロコシを意味する。 チチャ・フエルテ(chicha fuerte)。パナマの手法のチチャ。フエルテは「強い」という意味。ホラのチチャだが砂糖を入れたり発酵期間が長くてアルコールが強いから? チチャ・ブランカ(chicha blanca)はペルーはクスコのキヌアを使うチチャ。発酵を促進させるためにパイナップルの皮を用いるのは氏のアレンジか。

2025-05-29, read count: 1, page: 116 ~ 126

南アメリカのイモ類。ジャガイモ・キャッサバの現品種は苦みと有毒で発酵等の加工が必要だった。 ジャガイモ・キャッサバ・サツマイモのような世界的な注目を集めないアラカチャ(arracacha)・マシュア(mashua)・ウルーコ(melloco)・オカ(oca)・ヤーコン(yacon)等がある。 キャッサバとサツマイモのチチャ。サツマイモに含まれるアミラーゼが発酵を促進する。アマゾン川流域の住民は大昔から知っていた。 発酵キャッサバのトルティージャ(Yuca podrida)。発酵キャッサバをトルティージャの具に使う。 トゥクピー(tucupi)は苦み種のキャッサバの有毒なジュースを発酵させ無毒化しタール状のペーストにした調味料。発酵キャッサバから作られる産物に 1 つで他にもデンプンは caguana と呼ばれる。 最後に先住民の慣習に触れる。先住民が発酵の文化を持たないといわれていた先入観は入植者達のプロパガンダに過ぎず、文化に根付く洗練された発酵手法がある。 多くは失われたが残された文化を受け継ぐことがその伝統を尊重することである、と。教化なんかもそうやろうけどどこを見渡してもあるよな。日本でも。

2025-05-30, read count: 1, page: 127 ~ 137

4 章 カビを育てる この章ではカビと言われる糸状菌を利用した発酵に目を向ける。 カビによる発酵に必要な条件は厳しい。小さなバッチから工夫しながら学ぶ必要がある。 カビは特にアジアで広く利用される。モルト処理や唾液による糖化の手法の 3 つ目の手法として知られる。 麹の作り方にも昔ながらの手作りと完全に機械化された方法がある。 流石に麹は味噌作るときでも買ったことしかないわ。自家培養するなら失敗を許容して実験する覚悟がいるな。

2025-05-31, read count: 1, page: 138 ~ 143