Booklog - 組織の壁を超える 「バウンダリー・スパニング」の 6 つの実践

Chris Ernst, Donna Chrobot-Mason, 三木俊哉, 加藤雅則

目次、序文。 CCL(Center for Creative Leadership) の研究に基づいた縦割りの階層化組織ではなく、組織横断的なリーダーシップを発揮するためのプラクティスを紹介してるみたい。 現代的な組織で境界を超える必要があることは TEAM OF TEAMS やメディチ・インパクトでも重要視されている点なので、それらの研究に基づいた補完を期待して読み始めた。 わたし自身、開発組織内だけで見ても横断的に行動していることが自身の価値の一部なので、興味深く読んでいきたい。

2026-10-03, read count: 1, page: 1 ~ 12, pages read: 12

はじめに ~ 序章。インターネット等コラボレーション技術の進歩が物理的境界を取り払う反面、人間関係の境界は今なおくっきりしている。それを橋渡しするのがリーダーの重要な仕事。 本書で言う Boundary は、人々の活動を制限する障壁となる境界であり、同時に最先端の活動領域を指す。 Boundary Spanning Leadership はその境界で活動するためのスキル。 Buffering(和らげること) Reflecting(映し返すこと) Connecting(つなげること) Mobilizing(結集させること) Weaving(織り合わせること) Transforming(変容させること)の 6 つの実践が必要。 CCL(Center for Creative Leadership) の研究に基づいていて、リーダーシップを方向性(Direction)、団結力(Alignment)、責任感(Commitment)の 3 つの成果を出すものとする前提がある上で読む必要があるみたい。 全体としては三部構成で、始めに分断させる力・分断がアイデンティティに起因することを学び、その後の各部でプラクティスに触れ、最後に境界を超えた協力がもたらす可能性や優れた成果であるネクサス効果に言及して終わる構成になっている。 人間関係の境界の実例として、南アフリカのアパルトヘイトとその後の激変で人の方が変化出来ず溝となる話が触れられてて興味深い。 メディチインパクト同様に接続地点に創造性が生まれることに言及されてるのが興味深いな。本書ではれをの連結点(ネクサス)と呼ぶ。 メディチインパクトが概念の交差させることに注目していたのに対し、本書は人・組織を交差させることに注目するみたい。 AI のススメで読むことにしたが、今のところ良い感触。

2026-10-04, read count: 1, page: 13 ~ 36, pages read: 24

第 1 章。現代のリーダーが克服すべき境界とリーダーを取り巻く状況。 階層間の垂直の境界・部門間の水平の境界・ステークホルダーとの境界・人口属性上の境界・地理的な境界。これらはリーダーシップの研究からも時代を超えた普遍的なものであることがわかっている。 かつては垂直の境界が大きな分断の理由だったが、今では水平の境界、それについでステークホルダー・人口属性、・地理的境界が続く。 最後に自分のネクサス課題(結びつきの課題ということだと思う)を明らかにするプラクティス。 なんだか慣れない文でうまくまとめられなかった。人材開発とかエグゼクティブ教育って感じなのかな。 無理やり自分の興味の範疇に当てはめると、 Principal Engineer のような組織横断・全社的な課題を扱うと、自分自身の中に複数の専門領域それぞれの要求や制約を同時に抱える。 それを単一の専門領域だけでなく、複数の専門領域のバランスを取りながら解決しなければならないあたり、 boundary spanner(境界にまたがって活動する者)の価値でもあり悩みでもあるわけか。

2026-10-05, read count: 1, page: 37 ~ 63, pages read: 27

第 2 章。個人・集団のアイデンティティは、差異や独自性、統合や所属といった人間の根源的な欲求の微妙なバランスから作られる。 その「自分は何者か」という自己規定が、人間関係における最も強力で手強い境界であり、境界のリーダーシップでも中心的な問題。 属性の重要度、支配性・非支配性。アイデンティティは組織間にグレート・ディバイドを生む。ジェーン・エリオットの実験で、実質的な差異がなくても境界が生み出せることがわかった。 内集団へはハロー効果といったバイアスの影響もある。5 つの境界それぞれに、アイデンティティの異なりにより分断が起こる。 ヒトは内集団にいると自分のアイデンティティに無自覚であり、自分が外集団にいたときの気持ちをすぐ忘れてしまう。 同じ様に多くリーダー自身も境界の中心にあるアイデンティティの問題を認識できない。そこがアイデンティティを知ることの重要性につながる。 青い目・茶色いの実験でアイデンティティによる分断が示されたのはすごいが、明らかに倫理的な問題をはらんでて時代を感じさせる。 この内集団/外集団というのは重要なキーワードっぽいな。アイデンティティに無自覚であるというのは自戒としても覚えておきたい。

2026-10-06, read count: 1, page: 64 ~ 80, pages read: 17

第 3 章。グレート・ディバイド。ロバーズ・ケーブ実験での接触仮説が当初機能しなかったのは、フォルトライン、1 つまたは複数の特徴に基づいて集団を下位集団に分断する仮想の境界線、が活性化したから。 表面化していないフォルトラインは、地殻プレートのように断絶・摩擦・潜行・衝突をトリガーに活性化する。 集団間の待遇の差は断絶を生む。別の集団への侮蔑や怒りは摩擦を生む。ある集団に別の集団への同調を求めると潜行を生む。集団間で正反対の意見や価値観を持ち意見を変えずぶつかったとき衝突を生む。 こんなときリーダーが行動できないのは、事態の悪化を恐れ問題を認めない、時間が解決すると考えている、初めは小さな不平等である、単にどうしていいかわからない、といった理由。 そんな状態でも、ロバーズ・ケーブ実験で示されたように問題解決・共通の目標達成のために連携することで、ネクサス効果の条件を整えることはできる。 文化のギャップですれ違いが生じるのは異文化理解力で読んだ通り。 ただそれより集団のアイデンティティがすぐ形成され、内集団・外集団でポジティブ・ネガティブな反応をすぐ示すのが難しいところやな。

2026-10-07, read count: 1, page: 81 ~ 106, pages read: 26

Part 2 。バウンダリー・スパニング・リーダーシップの 6 つの実践は、相互に関連する、境界のマネジメント・共通の土台作り・新たなフロンティアの発見、の戦略に基づく。 境界のマネジメントには、バッファリングとリフレクティングがある。 バッファリングは、アイデンティティが持つ統合・所属に対する欲求と独自性に対する欲求のうち後者を利用し、境界を創出・強化することで集団に安心感をもたらす。 リフレクティングは、集団間の違いを映し出し、知識や経験を共有して互いの敬意を深める。 第 4 章。バッファリング。境界のマネジメントを可能にする実践。ここでのネクサス課題は境界を壊すより管理すること。 境界を定めることをバウンダリーワークといい、ある集団が脅威を感じた時、境界を定めて情報や資源のフローを監視・保護し、集団の安全と安定を確保する。 バッファリングの戦術はいくつかある。集団を分ける。外部からの脅威を減らす。境界が目に見えるようにする。統一のチームアイデンティティをつくる。チームの一体感を築く。 脅威を感じるのは、大抵は集団への意図的な攻撃でなく、組織の中の避けられない変化。それは喪失感を伴うもので、喪失感を和らげ脅威を減じるための施策が必要となる。 ただし、ある集団を支援するため行動が別の集団の緊張を高めることもある。リーダーシップトレードオフという。 まるで喧嘩してる子供を引き離すようやな。でも本質的に同じっぽいな。しかしビジネスでこれをやろうとすると、中々に難しいなこれは。ただあえて境界を定めることの意味は理解した。

2026-10-08, read count: 1, page: 107 ~ 131, pages read: 25

第 5 章。リフレクティング。境界の両方に目を向け、他の集団にも同じことをさせてみて、互いの相違点・共通点を理解し尊重する。 これは同時に境界を明確にすることでもある。リフレクティングは共通の土台を築く前に踏むべき基本的ステップ。 集団同士がそれぞれの願望・不安・関心事などを共有し、差異を受け入れて初めて、問題解決に向けて協業の手段を見出すことができる。 リフレクティングの戦術。集団がお互いのことを知る機会をつくる。対立をもたらす要因となりやすい価値観・認識・感情の根本原因を明らかにする探求を誘う、安易な答えを許さない、激しい情熱を引き起こす問いを発する。 違いを掘り下げ理解してその下に隠れた共通点を浮かび上がらせる。集団が 相手の集団を自分の集団に引き入れようとする傾向に抗う。スピードアップのためにあえてスピードダウンして集団に学習・知識交換・視点取得の機会をつくる。 ここでのリーダーの役割は、相手集団の代弁者として鏡のように集団に伝えること。 ただし、リーダー自身が集団に属すケースが否応なくあり集団に一員とみなされ公平なアウトサイダー(恐らく部外者)として見られない点が落とし穴。この場合は公平とみなされる別のリーダーを立てるなどの工夫が必要となる。 本書の実践の紹介パターンは理解した。そしてこれまた難しい実践だ。実践とは言うが所謂方法論的な固定化されたプラクティスを提供しないのは大変ではあるがある意味誠実やな。

2026-10-09, read count: 1, page: 132 ~ 154, pages read: 23

Part 3 。集団の共通点を見つけ、共通の土台を作る。 コネクティングでは一時的に境界線を無効にし、モビライジングでは境界線を再構築する。 第 6 章。コネクティング。境界線を保留にして信頼を築く。共通点を見つけることで、意見や視点の違いを創造的緊張として尊重できる。 集団のアイデンティティを抜け出し個人ベースでやりとりできるニュートラルな場の提供。ロバーズ・ケーブ実験の問題解決の場もその例。 コネクティングの戦術。中立地帯で相まみえる。境界を超えた予期せぬ関係づくりを促すための魅力的な空間をつくる。 コミュニケーションやネットワーキングのツールを使って、集団のカテゴリーとは関係のない個人的な情報を共有して人々を結びつける。 相互の共通点を見つけさせてネットワークを築く。オフィスの外で交わる。 リーダーのコネクターとしての役割は、分裂・細分化した集団に橋渡しをする、境界を超えて積極的にどんどん関係を作る、大きなネットワークを作るよりも新羅関係を育てること。 集団同士が接触した際にその場所に対して予期せぬ反発が起こる可能性があるのが落とし穴。その場合は辛抱強く中立地帯を設定し直す必要がある。 魅力的な空間を中立地帯として提供し創発につなげるのは Pixar のオフィス設計でも見たな。

2026-10-10, read count: 1, page: 155 ~ 179, pages read: 25

第 7 章。モビライジング。集団の間にコミュニティを構築して境界を再構成する。 それぞれの集団の小さなアイデンティティから抜け出し、すべてのメンバーを包摂するより大きな集団のアイデンティティのもとに集まる。 コネクティングがアイデンティティの境界を一時的に保留するのに対し、モビライジングではアイデンティティで包摂する。 モビライジングの戦術。各集団に同じ行動を起こさせるビジョン・ミッション・ゴールを掲げる。共通の包摂的な価値観を明らかにし共有すべきアイデンティティを構築する。 全員に役割があるストーリーで誰もが所属できる文化を醸成する。共通のシンボルで自分たちが何者で何を信じるかを示す。 落とし穴、というより共通のアイデンティティの設定が極めて難しい。シンボルの利用は全ての集団が共感できるものでないと反発につながる。各集団のコアのアイデンティティを捨てさせるのでなく、包摂するより大きなアイデンティティを構築する必要がある。 リーダーの役割はモビライザー(恐らく、結集する者)としてカリスマ性やゴール設定でなく、アイデンティティの創始者として各集団の内外でどれだけ丁寧に語れるか否かにかかっている。 より大きな集団に統合するときは、全員が当事者として関われる集団にしないと内部で分断や対立を再生産するだけって感じか。 内容はいいが、左脳/右脳みたいな俗流心理学の陳腐な単純化が出てきてそれだけで内容を貶めてしまうので、そこだけは残念やな。 Lenovo の IBM 買収後のグローバル企業としてのアイデンティティの醸成が上手くいっている例として載ってる。確かに買収当時こそ製品の印象を貶めるヒトはいたが今はそうでもないし上手くいってるのかも。 わたしもちょうど所属する元スタートアップが買収され数カ月のところだが、こんな大きなアイデンティティの共有みたいなのはないなあ。

2026-10-11, read count: 1, page: 180 ~ 200, pages read: 21

Part 4 。差異化と統合化の 2 つの基本的欲求が交わったところに起こる新しい変革。 ウィービングは集団間の境界を織り合わせてより大きな集団の中で統合し、相互依存を高める。トランスフォーミングは境界を切断し集団相互の改革を促す。 第 8 章。ウィービング。異なる集団同士がプラスの相互依存を強化し、相互に補完し合う別々の役割を果たすことで、大きな集団の中で統合される。境界は折り重なりながらも互いを区別できる状態。 ウィービングの戦術。共通の目標の妨げとなる障害や障壁を取り除く。集団の差異をそのまま利用する。各集団の経験・専門性・行動を繋いで共通の大きな目標にする。 異なる目標を持ちながら、もっと大きな目標も共有した、集団の集団を作る。協力を促すために各集団だけでは達成できない相互依存的な目標を定める。 リーダーの役割は、集団同士の相互依存が生じるように条件を整え、良い見本を示すこと。そのために対立や逆境を上手く制御する根気強さが必要。 協力を促すには、どれかひとつの集団だけを重視しないようにして、上手く緊張のバランスを取る必要がある。各集団が違う役割を果たしながらも、互いの価値に差が生じないよう、全体観を維持することが重要。 集団のアイデンティティを消さない点はこれまでの実践でも一貫しているが、ウィービングではさらにその差異そのものを相互補完の資源として利用する。集団の安全性を保ちつつ、全員参加でそれぞれの良さを活かすことが重要なんやろう。 異なる集団の差異が共存することが可能性を広げることを示している。これはメディチ・インパクトの文脈に近いか。 随分と TEAM OF TEAMS みを帯びてきた。 TEAM OF TEAMS の自律性を持って全体として適応する組織に対し、こちらは各集団の差異を活かして相互依存と補完関係によって全体として機能させる感じか。

2026-10-12, read count: 1, page: 201 ~ 231, pages read: 31

第 9 章。トランスフォーミング。既存の境界を切断したときに新たに構築されるアイデンティティと境界の変容による集団の改革。 社会心理学及び組織開発分野のコンセプトを融合したもので、社会的カテゴリーを混成したチームを作成したり、ラージグループ手法と呼ばれる境界を超えて集団をまとめる手法に基づく。 トランスフォーミングはこれまでの 5 つの実践の戦術を全て利用でき、ゲシュタルト(全体性)と考えることができる。 トランスフォーミングの戦術。全ての集団を関与させ、できるだけ多様な視点を確保する。 リーダーが関係する全員のアイデンティティを考慮に入れた問題の枠組みを定める。 全ての集団に等しく参加のチャンスを与える。全ての集団にその核となる価値観を確認させる。 類似点と相違点の両方を引き出しポジティブとネガティブ両方のネルギーが流れるチャネルを作る。 これまでの実践のゲシュタルトであるトランスフォーミングはこれまでの落とし穴がすべて当てはまる。とはいえ 5 つの実践が定着していればトランスフォーミングの基盤は確保されていると考えることができる。 謙虚に集団の現アイデンティティを捉え、確固たる決意のもと新しい可能性のために変革に踏み出す。 アイデンティティを木目に逆らって切断って表現がちょっとわかりにくかった。 変わらないアイデンティティはありつつも、切断し協力できるところに新たなアイデンティティができる。 なら木目は確固たる部分ではなさそう。社会的カテゴリーの混成って話があるからそれかな。 5 つの実践が定着し、従来の集団の中の集団の枠組みが解けて繋がり直す変容を指して、トランスフォーミングって感じなんかな。

2026-10-13, read count: 1, page: 232 ~ 256, pages read: 25

Part 5 。ネクサス効果。 6 つの実践の成果でネクサス効果が実現したときに得られる可能性、及びその可能性がどんな問題を解決でき、どんな革新的アイデアにつながるか。 第 10 章。 nexus の語源はラテン語の「つなぐ」 nectere 。つながりや結びつきを意味する。 本書ではネクサス効果を「各集団が一致協力して達成できる単独では達成できない無限の可能性や優れた成果」と定義する。 事例としてジョン・ヘレラのラティーノ・コミュニティ・クレジット・ユニオン(LCCU)の話。 事例からの気付きとしては、単一の組織としてまとまっていない別々の集団でも、同じ社会的カテゴリーの中で相互の関係性を築くことで集団相互の改革につながり、ネクサス効果が得られたというところか。 またネクサス効果が発生する「集団がぶつかり、交わり、繋がる場所」はまさにメディチ・インパクトのようやな。本書の方が交差点でを成立させるための条件の解像度が高い。 6 つの実践が一度やったらリストから消すタスクでなく繰り返し何度も行われる環境が必要。 まとめの部なのでこれまでの内容のおさらいって感じ。

2026-10-14, read count: 1, page: 257 ~ 287, pages read: 31

エピローグ。バウンダリー・スパニング・リーダーの取り組みが完全に実現したときに得られる未来。 ビジネスや日常生活で直面する課題が相互関係にあるため、境界を超える必要性は高まるばかり。しかしそのポテンシャルはまだほとんど実現できていない。 これまで紹介した事例の先のもしもの話を書いて、境界を超えることのポテンシャルについて触れてる。 最後に書かれた「文化の新たなフロンティアを発見したのは、集団がぶつかり、交わり、つながる場所」はメディチ・インパクトを読んでるようやな。 付録は、本書の発端となった研究プロジェクト、リーダーシップ・アクロス・ディファレンシズ(LAD)、リーダーシップ・アット・ザ・ピークについての説明や、実践の一覧。 またセンター・フォー・クリエイティブ・リーダーシップ(CCL)が提供するバウンダリー・スパニング・リーダーシップに関するリソース、人材システム(バウンダリー・クロッシング・アサインメント)・リーダーシップ文化(相互依存型・独立型・依存型)・応用学習システムについて。 解説は主観が強く感じられわたしには響かなかった。本書の内容をバイアス抜きで読んで自ら汲み取る方が良いと思う。 本書はこれで終わり。原著はメディチ・インパクトの 7 年くらい後の出版なので、重なりを感じつつも研究で吟味されたより解像度の高い議論が展開されていた印象。 Team Topologies のように境界を明確化・安定化して人や組織の負荷を制御する方法論より、 TEAM OF TEAMS、メディチ・インパクトや本書のように、境界を動的に扱い、その交差や越境そのものを価値に変えるアプローチの方が、明確に好みやな。

2026-10-15, read count: 1, page: 288 ~ 351, pages read: 64

Years (3)

Books (66)